「敬意を払え」ッ!!

今年になってから今まで何について書いてたかな、と思ったらほとんど何も書いてなかったですね(笑)。
まあ、忘れた頃にということで。なんか「季刊」みたいになってますけど。


とりあえず『三文オペラ』。大阪でやってくれるのはいいのだけど、僕はどうしてもどうしてもあのシアターコクーンという場所に思い入れがあるので、どこかで東京に弾丸ツアーを決行するタイミングが無いかと思ってるところです。


演劇畑っていうのは、僕の(元)専門分野からすると、専門ってのはつまり学問としての研究とか普段の興味とかを曖昧に包含して言ってるわけですが、お隣さんみたいな部分があります。だからブレヒトだとか『三文オペラ』なんかもね、何か偉そうに語るなんておこがましいけど、とにかくスゲエ、ってぐらいは知ってる感じでした。


これを宮本亜門演出で、三上博史主演でってのはもうほんと凄い注目の舞台ですよね。そういう感覚だけは反射的にあります。なんか後出しじゃんけんみたいな言い方ですが(でもこうする以外に言い様が無い)なっちが出てるとかじゃなかったとしても興味が湧きます。個人的には。


『せりふの時代』に宮本亜門×安倍なつみの対談がありました。これは非常に良かったです。なっちは結構動物的な表現者って部分があるから、実際にメタレベルに立って自分の表現を語ろうとしても結局抽象的な表現になってしまうんですよね(笑)。だから亜門さんという演出家としての立場の方がなっちを分析するように解説されていたところは、非常に興味深く、また新鮮な感覚で読みました。
安倍なつみという表現者を、現場でやりとりをしている他の表現者の人が理性的に語ってくれるというのに僕はそもそもずっと飢えていて、そういうのをかなり有り難がります(笑)。だって本当に、かつての状況だと、つんく♂氏はテンション高く喋っても基本的に何言ってるかわからんし(批判してるのではなくてね)、えーと夏まゆみ先生がなっちを評した内容は鮮明に覚えていますけど、本当にそれぐらいしか思い出せないかな。雑誌の露出は多くたって、ほとんど提灯記事つったら悪いけど、表面的なところをサッと撫でて当たり障りのない感じに仕上げた感じのものが多くて。まあ「アイドル」ですからね。
だから例えば最近だと、和田春彦さんによる、ブログでのツアーについての詳細な解説なんかはもの凄く嬉しいです。ちょっと余談になりますが、ツアーDVDを見る際にも改めて和田さんによる「セルフライナーノーツ」のように読み返したりして、なるほど、と思ったりしてます。


そんなわけで、今回の『せりふの時代』も非常に良かった。
特に亜門さんがなっちのことを「舞台女優として非常に面白い存在」と評していて、その根拠がとても興味深かったです。「何をどう言われたっていい、あたしはここに立つ!」というなっちの姿勢。「役になるのは裸になることであって、着飾ることではない」という亜門さんの言葉が非常に印象的ですが、つまりなっちのそうした姿勢はその要求に応えられる素地を備えている、ってことですね。たぶん。亜門さんはなっちのそういう面に気付いてからより面白くなった、とのこと。


これは本当に、なんというのかな、とにかく嬉しいです。なっちの姿勢が嬉しいし、そこを魅力だと亜門さんがおっしゃることが嬉しいです。10年以上、僕はなっちのそういう強さを感じて、例えばそこに憧れてきた部分があるわけで。


それから、なっちが「稽古の最初と最後で驚くほど変わる」というのも非常に面白いです。先の見えないところの手探り感、予め決められた予定調和の表現みたいなものから抜け出してほしいという気持ちがあって、こういう舞台を創り上げていく過程というのはまさに予定調和の対極にあるものですね。なんというのかな、なっちには「お先真っ白」の表現者でいて欲しい感じがあるんですよね(笑)。


いつか書いたかもしれないし、書かなかったかもしれないけど、なっちに対して「僕の期待を裏切って欲しい」ってのがあるんですね。「(いい意味で)」って注釈をつけるのが適切かはわからないけれど。僕なんかが予測して想像するような枠はあっという間にぶち壊して、後頭部をぶん殴られるような衝撃とか、口をあんぐり開けるような驚嘆とか、そういうのを待望してる感じはあります。もちろん「いつものなっち」が好きだけど、どんな表現をしても彼女にはずっと変わらない「いつものなっち」が確固としてあるのだから。「変わることを恐れない」ことが「変わらないいつものなっち」だと僕は思うから、本当にもう思うがままに何をどう表現してくれてもいいやって思います(笑)。特に最近、っていうのはここ3年ぐらいかな、そういう気持ちが強いですね。


そんなわけで、今回の舞台はもう本当に楽しみです。ちょいとゲネプロの写真を見てしまったりしたのですが……いやもう、いいぞいいぞもっとやれ! みたいな気分だったりしますね。テーマがテーマだけに、なんつうのかな、セクシャルな表現もあると思うし、それを拒絶するような向きも出てくるのかどうかしらないけど、僕はもうほんとに、んなこたぁどうでもいいです。別に対談でのなっちの言葉におもねるというか、無理に合わせるような意味ではなくて。改めて言うけど、僕は表現者としての安倍なつみさんを心から「尊敬」してます。


普段の歌のステージと比べて、舞台ではそこにいる人は「リュー」だったり「ポリー」だったりするわけで、なっちの本質とか素が見えにくい、という印象があるかもしれません。だけどね、今回の劇の内容やら亜門さんのコメントやらを見てると、これはもしかすると「最もなっちの素が露骨に見える」場なんじゃないかなと思ったりします。ライブのMCでもラジオでも(ラジオの話もしたいんですけどね)見えないような部分が。


よく考えると、なっちが自分から「アイドルからの脱皮(歌手/女優へ)」みたいなことを言ったことって多分一度も無いですよね。周りは言うけども、なっちからは「呼びたい呼び方で呼んでくれたらいいです」みたいな態度を感じます。そんなことよりも自分の表現を高めることに集中しているっていう部分。本当にこういうところが大好きです。謙虚なんだけど、謙虚っていうだけでもない。何と表現したらいいのだろう。


ま、いいや。とにかく、なっちが大好きです(笑)。


不確定な事項が多い年度の始まりなのでなんとも微妙ですが、東京で大阪で、複数回必ず見たいなあと思ってます。全ての人に「敬意を持って」劇場に足を運びたいなあ、なんて思っている次第。


ひとまずは、初日おめでとうございます、ということでした。いやあ楽しみ。