表現者・安倍なつみ

コンサートのネタバレ防止で、好きなサイトさんをあまり巡回できません。まあ、ちょこちょこと耳にしてもうかなり知ってしまっているのですけど(苦笑)。そんな中で、恐る恐る各所を覗いてみると、なっちは先日やぐと一緒に『天保十二年のシェイクスピア』を観劇したとのこと。


いいな、いいな! 僕も見に行きたかったのですが、金も時間も無くて諦めていたのです。井上ひさしの原作を蜷川幸雄が演出していて、出演は唐沢寿明ら。かなり評判になっている様子です。


しかし、こういう話を聞くと嬉しくなります。そういえば以前ラジオでしたか、なっちは「芝居を見に行って、置いてある近日公演のパンフレットをごっそり持ってきて、それを見て次に見に行くのを決める」などと言っていました。寸暇を惜しむように、というか、その少ない休暇に何をしたいかと考えて、自然に「観劇」が浮かぶのでしょうね。表現者として勉強したいという動機はもちろんでしょうが、それ以前に、お芝居や歌の舞台といったものが純粋かつ単純に「好き」なのでしょう。なっちが、松任谷由実さんのコンサートを見に行った話を以前のファンクラブイベントでしていたことを思い出します。また、市村正親さんと番組で共演したことがありましたが、その際には劇場で既に観ていた市村さん出演の映画について、「市村さんのどのセリフにどのように感動したか」ということをもの凄い勢いでこと細かに語っていましたね(笑)。


なっちには是非、いずれ今回のようなトップレベルのお芝居に、観客としてではなく演者として関わって欲しいと思います。もちろん最初は脇役でいいのです。対象がファンに限られ、主役のなっちを頂点にまとまってしまうのではなく、一人の表現者として作品の一部となり、徒手空拳で挑んでいくなっちが見たい。どこまでも努力家で貪欲に勉強するなっちが(茅野イサムさんの評価を見たときは、本当に涙が出そうでした)そんな機会を得れば、どれほどのステップアップを見せてくれるだろうか、と思います。


今度のドラマ「たからもの」も楽しみです。今までの多くの作品のようになっちは主役で、脇役にはアップフロントのタレントが配されているのですが*1、テーマとしては明らかに「アイドルとしてファン受けを狙うだけの内輪の作品」ではありません。久し振りの女優・なっちがどんな表現を見せてくれるか。本当に楽しみです。


「なっちのいつもの役柄で、新鮮さが無い」という声を聞きます。確かに、「心に大きな傷を抱え、内省的で、時にはひどく不幸な境遇に晒されている」という役どころは「女優なっちのスタンダード」となっています。『最後の夏休み』の加藤祐子、『壬生義士伝』のしづ、『ナースマン』の坂口美和、『仔犬のワルツ』の桜木葉音、『三毛猫ホームズの犯罪学講座』の宮越友美、『ラストプレゼント』の雨宮京子(ちょっとどれだけ覚えてるか試してみたかったんです、笑)。それぞれ差はありますが、ベクトルとしては似た方向を向いていますね。


しかし、それで構わない、と思います。「ではなっちは、そうした役どころを余すところ無く演じ切っているのか」と言えば決してそうではありません。今までもなっちは演じる度に表現をレベルアップさせてきましたし、今度もきっと新たなレベルアップを見せてくれるでしょう。「●●な役どころを演じるなっち」という漠然とした表面的な部分を見るだけでなく、なっちの演技から何かを積極的に感じようという能動的な姿勢で見ていると、それがよくわかる気がします。もちろんそんなことは、視聴率のグラフには書いてありません。


同じような役どころならば、なっちがそれをどれだけ深化させているのかを如実に感じることができるし、それはそれで好ましいと思います。もちろんなっち自身は、新たな役どころを与えられる度に、新たな気持ちで役づくりに取り組んでいるのでしょうけどね。


ところで、先ほど「Gyao」のテレビCMを見ました。青木さやかが出ていたのだったかな。さして有名なサービスでもないのかなと思っていたら、登録者はなんと既に(公称)280万人を超えているとのこと。意外に多くの人の目に触れるのだろうかと思うと、少し嬉しくなります。
それに、もちろん地上波のテレビの影響力には及ばないのでしょうが、今回のドラマの視聴者は「垂れ流し状態」のテレビとは違う、ある意味で映画と似通った「よし、これを見よう」という能動的な態度で見るだろうということも嬉しいです。女優としてのなっちの魅力を知らなかった方にも、是非感じて欲しいですね。


ああ、楽しみ。


ところで。女優なっちについては、随分前に一度別件でご紹介した、うちなんかより遥かに有名なこちら「武闘」さん内の『ラストプレゼント』に関するテキストが気に入っていて、たまにふと思い出しては読み返しています。もの凄く深い「体温ある考察」ですので、ちょっとオススメしておきます(管理人さんは病気で臥せっておられたようだけど、大丈夫かな…)。


蛇足ですが、関連テキストを。
拙文「歌手か女優か」はid:natsumi-crazy:20050604#1117907970に。
表現者としてのなっち・受け手としてのなっち」についてはid:natsumi-crazy:20050831。
素晴らしいテキストを紹介した後だとお恥ずかしいのですが(笑)。

*1:もちろん、村上愛さんには好感を持っているのですけどね。そういう話ではなくて