「たからもの」と「頑張れ」

――私は頑張ってる。みんな無責任に頑張れ頑張れって言うけど、私は頑張ってる!


「たからもの」予告編の台詞より)

id:natsumilkさんのところでちょっと前に話題になっていて、僕もコメントさせていただきました。で、「無意識にだけど、そういえばなっちへのファンレターに『がんばれ』って書くの避けてた気がします」とか言いました。それは本当なんですが、僕はなっちに「がんばって」って言ったことがありました。文字通り「なっちに言った」のですね。


それはディナーショーの時。握手の時でした。伝えようと思っていたことをとりあえず伝え、なっちは僕の言葉に答え、しっかり目を見て頷いてくれました。その後でさらに、もう一言、何かを伝えられる時間があるように感じました。何を言おうか、こんな機会はまたと無い。僕はそう考えたと思います。そしてその一瞬「とにかく思ったことを言おう」と思いました。それで僕は確かに、搾り出すように「頑張ってね」と言っていました。その言葉が無意識に出ていました。なっちは笑顔で「はい」と言ってくれたと思います。


ひとつひとつの言葉って、乱暴な言い方をするならば、それ自体には意味はあって無い様なもの。文脈の中にあって初めて意味を得るものだと思います。その時の僕の「頑張ってね」には、自分で言うのもなんですが、とてもとてもたくさんの意味が込められていました。大げさでなく、8年間なっちを応援してきた想い全てが込められていたといってもいい筈です。ただその瞬間、僕にはそう表現する以外に術は無かったということ。


「頑張れ」には色々な「頑張れ」があります。全ての言葉に言えることですが、それぞれの言葉には、世界中でその言葉が発される回数ぶんだけ違った意味があります。特に「ガンバレ」のようなありふれた言葉は何気なく使ってしまいがちですが、時にそれはとても無神経な使い方になってしまうかもしれません。上記の台詞のように、それが人の心を傷つけることもあります。シンプルな言葉ほど注意しなければならないのかもしれません。
だけど、それが使われる文脈や状況・その言葉を言う表情によっては、それはとてもシンプルで力強い「励ましの言葉」になります。シンプルであるからこそ、色々な想いを込めることができるのだと思います。


僕はやはり、「頑張れ」という言葉をファンレターでは使わないと思います。「頑張れ」という言葉を文字にして使うときに、僕の気持ちをきちんと込めてきちんと伝わるように使える自信が無いから。だけど、あの時僕が面と向かってなっちに伝えた「頑張って」は、きっときちんと伝わったはずだと思います。だって僕は、確かに8年間ずっと思っていたのです。いくつもの困難に立ち向かい、懸命にそれを乗り越えて進んでいくなっちに向かって「頑張れ!」と。

やさしさだけじゃ 人は愛せないから
ああ なぐさめてあげられない
期待はずれの言葉を言う時に
心の中では ガンバレって言っている
聞こえてほしい あなたにも
ガンバレ!


THE BLUE HEARTS『人にやさしく』(詞・甲本ヒロト


僕も頑張ろう。