映画を観ました

natsumi-crazy2005-04-11


ロング・エンゲージメント』。ジャン=ピエール・ジュネ監督、オドレイ・トトゥ(写真)主演という、あの『アメリ』のコンビです。とはいっても、ストーリー展開は『アメリ』とは似ても似つかぬもの。第一次大戦期のフランスで、ドイツとの激しい戦闘が行われる中、戦争にその運命を翻弄された恋人たちを描く映画です。


やはりフランス映画は、過去から現在に至るまで豪華絢爛のハリウッド映画とは一線を画す頑固な姿勢を保っていてちょっとニンマリします。戦争がテーマですから残酷なシーンも多くありますが、その描き方もやはりハリウッドとは違う。機銃掃射で兵士たちが次々倒れる場面なども、「たくさんの人が死ぬ」ではなく「一人一人が死ぬ」と感じるんですよね。また、小さな空間での親密な空気と空撮などを使った壮大なスケールの描写がよく溶け合っていました。温かな場面でも残酷な場面でも、なにかしら「フランス的な空気」がきちんとフィルムに反映されていて、それがこういった一体感を生み出したのだろうかと思います。


回想のシーンが実にしばしば挿入されるのですが、「謎解き」の要素も多分に含む映画であるためにそれらをきちんとつなげていかなければ話が見えてきません。しかし、モノローグ等を含めた種々の描写が饒舌すぎず、それでいて分かりにくいことも無いという適度さがあって、とても心地よく感じました。情報を頭の中で整理することが容易なため、自然にストーリーに感情を委ねることが出来ました。


ところで、オドレイ・トトゥという女優は凄くいいですね。ほんの少しばかりの目の伏せ方や唇の形の変化で、感情を見事に表すことができているなと感心しました。きっと物理的な表情の変化以上に、彼女の空気感そのものが感情に合わせて変化しているのでしょうね。実は彼女の出演作、上に挙げている2作しか観ていません。他のものも観てみたいと思いました。こんな風に、ひとつの映画を観たあとで「今後観たい映画リスト」に新たな別の映画が追加されるって素敵ですよね。そのようにさせてくれる俳優や監督たちには感謝です。


ちなみに、ごくまれにここに書く映画評には僕はネガティブなことをほとんど書きませんが、別に不満な点がひとつも無いわけではないですよ(笑)。ただ「書かないだけ」です。ネット上にそれを晒すことにあまり意味を感じませんので。「つまらなかったな」と思う映画については(映画に限らずですが)、そもそも触れることをしません。批評家じゃないですしね。