真面目に書いてみる

まあ、上記のようなことだけ書くのはあんまりなので、真面目に書いてみようと思います。感覚のみで上記のように思ったのだけど、「なぜそう思ったのか」という自分の感情をを可能な限り読み解くという態度は必要です。たぶん賛否両論巻き起こるだろうことは必至だし、そういう意味でもきちんと書いておかなければ。


僕は「ジャケットにはアーティストの写真が無ければならない」というようなことは思っていません。むろん、ジャケットはそのCDの顔であると言える重要なものです。しかし、それはそのCD自体が表現している事柄の一部分であり、その表現方法としてスタンダードなものが、アーティストのその曲に見合った写真が載るということなのだと思っています。アーティストの写真が無くても、きちんと表現として成り立っていればいいのだと思います。


たとえばこのジャケットは明らかに「狙っている」わけですが、決してふざけているとは思いません。というか、正確に言えば「真面目にふざけている」と感じるわけです。例えばテレビに出ている芸人さんって、不真面目だからギャグをやっているわけではありませんよね。真面目にふざけて、ギャグに昇華させているわけです。それと同じことです。


と書くと、「なっちは芸人じゃない!」と言われるかもしれません。それは当然そうなのですが、そのような境界を引くことなく、様々なタイプの表現に取り組んで欲しいと僕は思っています。なっち自身も、「私は歌だけ!」と凝り固まるのではなく、様々なチャレンジをしていきたいと発言していました。繰り返しますが、このジャケットはあくまで「真面目な表現」の一形態だと、僕は感じています。


「こんなもの、作ろうと思えば素人でも5分で作れる」とかいうことが問題なのではないのです。あえてこれをジャケットにしたという「選択」。それはかなり大変な決断であったはずです。僕はそこに「真面目な表現」を感じます。


普段あまりしない「世間的なイメージ」の話。
様々な姿を見せてくれる機会があった娘。時代と違い、最近のなっちがTVに出演するときのパターンは決まっています。司会役が「可愛い!」だとか「顔が小さい!」だとかの話をする。なっちはニコニコして、時折普段の多彩な表情を見せてくれるけれど、番組の流れとしては徹頭徹尾「かわいいアイドル」ということで扱われる。なっちがTVに出ているというだけで幸せだけど、僕はちょっとイラついてもいました。「そんなもんじゃないんだ!」と。
なっちはもっと面白いし、アホだし、それでいてクソがつくほど真面目で誠実なのだと。ニコニコしているだけのアイドルではなくて、様々な葛藤を山ほど抱え込んでもいるのだと。そういう体温ある「安倍なつみの起伏」を、その片鱗でも感じさせるようなものが欲しいと思っています。(世間的な)紋切り型のアイドル的なイメージを打ち破るきっかけがあればなあ、と思っていました。


僕の話。
僕自身も、とりわけなっちがソロ活動を始めて以来、なっちに対して「アーティスト」としての見方をすることが増えてきました。たとえばそれはなっちの表現に対する姿勢だとか、なっちがこの歌のこの部分にどんな想いを込めているか、とかいうことを深く考えてみたりすることに繋がりました。そういうことを続けていけば、なっちの表現における「連続性」のようなものが見えてきます。つまり、「あの歌であのような表現をして、だからこそこの歌ではこのような表現になったのだ」というようなこと。
それが見えてくること自体は素晴らしく嬉しいことです。だけど、それは連続性の延長から、僕の期待感を凝り固まらせます。「なっちの表現、かくあるべし」という固定観念が自分の中に自然と存在していることを感じていました。また機会があれば詳しく書きますが、コンサート会場での雰囲気などから、他のファンの方の中にもそのようなものがあるのかな、ということを感じたりもしています。それに対してはちょっと「これでいいのかなあ」と思ったりもしています。「ああ、今日も普段どおりのなっちだった」、それで安心してしまっていいのか? と。僕は欲張りだから、困惑するほどに新しいなっちの姿をも見てみたい。ファンがなっちの少し変わった表現を受容する柔軟性を無くしてしまうことは、なっちの表現を制限してしまうことに他ならないと思います。


そんなわけで、「なっちにはいい意味でどんどん期待を裏切って欲しい」と普段から思っているわけです。僕としては、まさにそれが実現された形で、後頭部を思いっきりガツンとやられたような印象を受けております。


このジャケットが賛否両論を巻き起こすのは必至であると思われますが、少なくとも「なっちは楽しんでやってるはずだ!」とか「なっちは実際不本意に違いない!」みたいな話ではなくて、「俺は好きだ!」「俺は嫌だ!」(そしてそれは何故なのか)のような話をしたいなあ、と思います。


少しは「俺は好きだ!」の理由が説明できたかなあ。