ともえちゃんフォークジャンボリー

台風の影響で降り続けていた雨も上がり、さりとて太陽が照りつけるわけではなく、過ごしやすい天候の中で行われたイベントでした。その天候のように親密な音楽が充ちていて、文字通り「音を楽しむ」ことができました。


坂崎幸之助さんと篠原ともえちゃんの軽妙なトークと綺麗な歌声、そして吉田健さん、武部聡志さん、STEVE ETOさんの確かで温かい演奏が、優しい空間を創り上げていました。そこに華を、刺激を、驚きを与える個性豊かな豪華ゲストたち。その中の主要な一人としてなっちがいたのだと考えると、いやはや幸せな場面に立ち会ったものだと思いますね。


なっちが主に歌ったのはTHE BLUE HEARTS『夕暮れ』『チェインギャング』、赤い鳥『翼をください』、モーニング娘。真夏の光線』、井上陽水『帰れない二人』。多くないけど、あまりに濃い楽曲の数々を、なっちはこれ以上無いほど丁寧に歌い上げていました。もちろん坂崎さんやLLASの方々の演奏、ともえちゃんの綺麗なハモリが加わったりするのですが。


特に僕としては、『夕暮れ』『チェインギャング』がようやく聴けたことが本当に嬉しいです。FACTORYで突然歌われたときにはニアミス(直前まで観覧する予定でした、その日出演するバンドの大ファンなので)して、それ以来の4年越しの体験です。このことについてはまた個別に書こうかと思いますが…(実家のPCなので、色々と不自由なのです)。


翼をください』も良かったです。この曲のB面…或いは両A面だったのかな、『竹田の子守唄』をやってくれると嬉しかったんですけどね(笑)。惜しいところ。しかしそれはともかくこの名曲、なっちの歌声で聴くとまた格別なものがありますね。「翼をください」と歌うのは、翼を持っていないからなんですよね。当たり前だけど、それを感じさせる歌い方をなっちはしていて、とても切ない気持ちになりました。


他にも色々あるけれど、とりあえず特に印象に残ったのはこのあたりでした。その他で印象に残ったことを少し。


辻香織さんという、なんだかハロプロファンは反応してしまう名前の(笑)アーティストの方が出演されていました。非常に個性的な歌声の方なのですが、この方の歌った高田渡さんの『コーヒーブルース』がとても良かったです。


あとリクオさんというピアノを弾きながら歌われる方。坂崎さんとのセッションで、全く違ったアレンジで演奏された井上陽水『氷の世界』は素晴らしかったです。それからこの方のオリジナルの、ポエトリー・リーディングのように歌われる(語られる)『同じ月を見ている』という曲が良かったです。この方京都の方らしくて「木屋町」「丸太町」と馴染みのある地名が出てくるのが嬉しかったというのもあります。『コーヒーブルース』で出てきた「イノダコーヒ」なんかもそうでした。


坂崎さんとともえちゃんが、病床の忌野清志郎さんに向けて歌った、清志郎さんがカヴァーした『デイドリーム・ビリーヴァー』。これも良かったですね。あの、松たか子さんが出てる発泡酒だかのCMの曲です。胸にしみました。


TUBE前田さんと坂崎さんの「モロ直球フォーク」な感じのコーナーも良かったです。陽水やりまくり。うーん細かく書きたいんだけど。


あとはやっぱりムッシュかまやつ。何歳だよあんたっていう。指先が結構おぼつかないのは年のせいだろうか、でもそんなの関係ないぐらい凄かったです。ギター弾きの端くれとして、一度生で見られて本当に良かった。しかも孫ぐらいの若手と一緒に、あれだけ自然に・当たり前に音楽を楽しめるんだからなあ、すごい。その気持ちがあの音を出させてるんだろうなあ。


色々端折っちゃったけど、その場になっちがいたわけです。で、なんというのかなぁ、その「居かた」。いかなる経緯でそこにいたかということ。


そりゃあひとつの仕事です。だけど、あの背後には篠原ともえちゃんという大親友の存在があって、ともえちゃんのLLASの方々との信頼関係があって、きっと今までの経験からなっちとLLASの皆さんの間にも表現者として通じ合う体験が蓄積されていて、そしてきくち伸さんというなっちという「歌い手」を買ってくれている方の存在があるんです。そして聴き手として僕がその場にいて、その誰もが音楽を心から愛しているのだということがなんだかとても嬉しかったです。なっちが大切にする「人」。「音楽」。それが凝縮されていました。


経歴も立場もそれぞれ全然違うけれど、あのステージの上にいたのはほとんどが「音楽に心を売り渡した」人ばかりでした。ちょっとマイナスな感じの言い方だけど、この言葉があっている気がします。「やめらんねーよな、やっぱりこれは」みたいな感じ。なっちもそんな、音楽という禁断の果実にイカレちゃった人の一人なんですよね。素敵だあ。


音楽を仕事としている以上、そりゃあビジネスのことだって考えなくちゃいけないし、様々なしがらみもあります。だけど音楽を愛する心だけは絶対に忘れないということ。そんな人たちはきっと、音楽に愛されているのだということ。なっちもそんな「ミュージシャン」なのだということ。それが生き様なのだということ。なっちの25歳の誕生日の直前にそれを感じられて、とても嬉しかったです。


そして今日があなたの誕生日。これからもロックでポップでおバカで糞真面目で、まっすぐでひねくれてて、とびきり綺麗でブサイクで、そして時に弱くて、だけど強くて、そんななっちでいて欲しい。


誕生日おめでとう。やっぱり、いつになっても僕はなっちが好きです。やめらんねーよな。