それは愛です

こんばんは、青山通りです。


なんか、ちょっと前に発表されたことなのですけど。「普通の良い話題」っぽいのが肩透かしっていうか。白蛇伝のときと変わらんぐらいじゃないのか、っていう。そんなことないのかな。まあ「界隈」とか知らんのだけど(笑)。


何かって、『トゥーランドット』出演決定の話。これ、凄いですよ。凄いですよ。本当に。本当に。


もともと『トゥーランドット』といえばプッチーニの名作オペラですよね。女子フィギュアの金メダリスト荒川静香が劇中歌『誰も寝てはならぬ』を使用したことからも、かなり認知度が高くなったのではと思います。当時の首相・小泉純一郎もオペラ好きで知られていて、取り上げられる機会も多かったと記憶しています。


これを今回は、あの宮本亜門がミュージカルとしてアレンジするとのこと。公式には「音楽をオリジナルで書き下ろして」とありますが、この音楽担当はなんと久石譲。衣装はワダエミ。なんだ、なんだこれは。赤坂周辺の再開発によって新たにオープンする新・赤坂ACTシアターこけら落とし公演となるようですが、それにしても凄い気合の入り方です。普通に見に行きたい。


トゥーランドット姫にはケリー・チャン、と思われていたのですが事故で降板のとの報が。残念です。代役は、こちらもアジアの歌姫と名高いA-Meiさんという方のようです。この方は知らなかったのですが、どうもアジア各地で大人気のようですね。ちょっと曲聴いてみようと思います。
カラフには岸谷吾朗、ティムールに小林勝也、というのはわかるのだけど、ワンとかミンってのは一体誰なんだ、という。どうもこれは新キャラクターらしいですね。その辺に中村獅童とかいったキャストが組まれているということは、原作に比すれば随分大胆なアレンジが為されるのではないか、と予想します。


で、リュー役に安倍なつみ。安・倍・な・つ・み!! この顔ぶれの中に。震えます。


リューは、3〜4番目あたりに名を連ねるキャラクターでありながら、物語の根幹にある精神をもっとも良く体現する非常に重要な役柄ではなかったかと記憶していたのですが、調べてみたら果たしてその通り。そして、原作では、有名なアリアを最も多く歌う役どころでもあります。


こういう古典的作品に関しては、ネタバレといっても、なんか「古典落語のオチなんて皆知ってるけどそれでも観に行くんだよ」という世界と同じだとは思うのですが、まあ観劇前に多くを語るのは野暮ってもんなので、やめにします。しかしともかく、僕の知る限りでは、リューの役どころというのはまさになっちの(なっちの歌声の)持つ多くの要素にピッタリ。なっち的王道と言えるでしょう(もちろんオペラ的歌声の話じゃなくって、キャラクターの持つ悲哀だとか慈愛だとかといった面で)。


このキャスティングに関しては、普段のようなノリで「さすがなっち」みたいには正直思えません(笑)。率直に言って、驚きです。大抜擢と言って良いでしょう。
主要キャストを眺めると、名前の前に「歌手」という肩書きが付きそうなのは、A-Meiを別にすればなっちだけです。いや、下手するとそれどころではなく、「アイドル」とか「タレント」とかいうよくわからん肩書きが付きます。
そんな中でなっちがキャスティングされたこと。どう見ても、客寄せパンダなどちゃんちゃらおかしい、全く無用な舞台であること。あらゆる意味で、大変に重要な舞台であること。


もうね、嬉しくて涙が出ます。


たくさんの人が、無意味な話題のために安倍なつみを「消費」していく中で*1、きちんと、先入観抜きに、彼女の積み重ねてきたものを見てくれた方がいたのでしょう。歌声の響きに、表情の動きに、何かを感じてくれた方がいたのでしょう。


彼女はきっと、色々なものを失ってきました。僕もそうです。誰だってそうでしょう。
しかし、何度倒れても、彼女が這いつくばっている場所は、彼女が今まで積み重ねてきたものの上です。そういう意味では、彼女は、何ひとつ失っていない。つまり、相変わらず彼女のことをアホみたいに大好きな僕自身もやっぱり、何ひとつ失っていない。傷つき、倒れ、しかし立ち上がり、前を向き、そして歩き出す。失ったものを取り戻しに行く。それが彼女です。それが素晴らしい。それが美しい。僕も、僕自身の人生において、そうありたいと強く思います。


今回の舞台は、かつてないほどのプレッシャーを彼女に与えることでしょう。しかし、もうそれについて僕が言うべきことなど何もありません。ただ自然に思うこと、めったに彼女に対して使わない言葉を言うなら。


ガンバレ、なっち。

*1:悲しいことに、「ファン」を名乗る中にもそういう人がいる